「嘘って嫌ですね。」

「は?」



俺の家に入って来た彼女の第一声は、それだった。まぁ、嘘は良いものではない。どちらかというと嫌な物、だが…今此処でいきなり言うなんて…一体どうしたというんだ。



「いきなり何?嫌味?」

「えっ、あ、いや、そうじゃないです、すいませんっ。」



慌てて謝った様子から、彼女が故意に俺に嫌味を言ったわけではないとわかった。



「そうじゃなくてほら、ライアーゲームでは皆嘘つくじゃないですか。」

「…まあな。」

「その時の皆さん…人が変わってしまってるんです。」

「……、」



何となく、言いたいことはわかった。嘘をついた時の人間が嫌いなんだろう。人間、誰だって少しくらい嘘はつくだろう。…目の前の彼女を除いて。彼女はどんな時でも、たとえ自分が傷つく時でさえも嘘だけはつかない。…そんなんじゃ、最後に傷つくのは自分自身なのに。そのことに彼女は気付いていないんだろう。



「秋山さん?」

「え、あ…あぁ、それで?」

「はい、だから…やっぱり、嘘はついて欲しくないな、と思ったんです。」

「あぁ、そう。」

「…嘘つくのは、やっぱり…嫌、ですよね…。」

「そうだな。」

「……どうして、嘘つきが居るんでしょうか?」

「さぁな。」



受け流すように返事をすると、彼女は「ちゃんと聞いてますか?」と確認するように言った。聞いてるよ、と端的に返すと、「なら良いですけど…」と小さな声で返してきた。…いや、呟くといったほうが正しいかもしれない。



「…嘘つきは、やっぱり嫌ですね。」

「君ね…、」

「何ですか?」

「君の目の前に居るのは、嘘つきだろ?」

「あぁ、秋山さんのことですか。」



彼女は納得したように頷いた。なんて言われるだろう。嘘をやめろ、か?…いや、そんなこと彼女は言わないだろう。彼女は俺の嫌がるような事は殆ど言わない。…と、なると…



「秋山さんは、特別です。」

「…っ、」



そこで俺の思考は完全にストップした。彼女の笑顔が、あまりにも眩しくて。彼女の言葉が、頭に響いて。この世界が全て醜く見えてしまうほど、彼女の笑顔は綺麗だった。どこまでも綺麗で、俺は踏み込んではいけないんじゃないか、なんて思った。



「…秋山さんは、嘘をついても…人が変わらないじゃないですか。」

「そう、か?」

「はいっ、いつも優しくて、…前科者だなんて…信じられない…。」

「……、」



彼女と居ると、つい自分が前科者だという事を忘れてしまう。俺も、きれいな所が少しはあるんじゃないか、なんて考えてしまうんだ。



「俺は嘘つきだよ、優しくなんか無い。」

「…そんなこと、無いですよ…。現に私、秋山さんの事…、」



顔をほんのり赤らめながら言われると、こっちまで顔が赤くなってしまう。…此処まで言われると、この続きは容易に想像できた。だが彼女は、やっぱり良いです、とにこりと笑いながら言った。(少し残念だ、とか思ったのは…きっと気のせいだ。)



「言えよ。気になるだろ、それ。」

「…そう、ですね。」



すると彼女は、またにこり、とあの眩しい綺麗な笑顔を見せて、









嘘つきは嫌い。でも、あなたは、
                              大好きです、なんてそんな可愛い顔で言わないで欲しい。