「見てください秋山さん!」



わぁ、と声を上げて、目をきらきら輝かせながら彼女は言った。窓を見上げて、早く早く、なんて俺を急かしてくる。(…というか、どうして君はこんな夜中に俺の部屋に居るんだ?)



「…どうした?」

「ほらっ、流れ星ですよ!」

「流れ星…?」



今日は良く晴れていて、星が良く見えた。その中に、スーっと、一筋の光が流れた。何回も何回もスーっと流れては消えていく。



「お願い事…何にしようかな。」

「君、そんなこと信じてるのか?」

「えっ、あ、いや…でも、ロマンチックじゃないですか。実際そうだったらいいな、って思っちゃいますよ。」

「…そうか?」



彼女はそうですよ、なんて笑いながら言って、本気で願い事を考え始めた。うぅーん、違うなぁ…えっと、なんてぶつぶつ言いながら必死に願い事を探す彼女を見て、思わず頬が緩む。そんな顔を彼女に見られまいと、慌てて視線を星空に移す。



「秋山さんは、決まりましたか?」

「…俺も願うのか?」

「当たり前ですよ、こんなにたくさん流れ星見れる日なんてそうそうありませんよ?」



確かに。



「まぁ…そう、だけど…。」

「あっ、流れ星…!!」



彼女は必死に願い事を言おうとしたが、どうやら三回言えなかったようだ。あともう少しだったのに、なんてしゅん、とうな垂れている。そんな姿さえも可愛らしくて、本当にこいつは確信犯なんじゃないか、なんて思った。(あぁもうどうして君は…、)



「…何、願おうとしたんだ?」

「えっ、あ……、」







「これ以上、秋山さんが傷つきませんように、って、お願いしたんです。」








言葉が出なかった。(流れ星なんて、滅多に無いチャンスなのに、)
なんて言えばいいのか解らなかった。(それなのに、どうして俺なんかを、)



ただ、彼女がどうしようもなく…愛しかった。







俺らしくない、なんてわかってた。愛しい、なんて言葉は、俺には不似合いだと、恋愛、なんて事は、俺には関係ないと、ずっと思っていた。それなのに、目の前の彼女に対する気持ちは、「愛しい」以外の何物でもない。



「…どうして?」



出てきたのは、そんな言葉だけで。



「秋山さん、すごく傷ついてますから、」

「……、」

「お母さんを失って、しかもまたライアーゲームなんかに巻き込まれて…、」

「―――……、」

「…って、私の所為なんですけどね、…っ、秋山、さん!?」



手を伸ばして、彼女の腕を掴む。そのままぐいっ、と引っ張ると、彼女は簡単に俺の腕の中に収まった。びっくりしながらも、何も抵抗せずにずっと俺の傍に居てくれて、嬉しくて、泣きそうになる。



「……どうしたんですか…?」

「別に…君の所為でライアーゲームに巻き込まれた、なんて思ってないから。」

「…はい。」

「君が悪いわけじゃないから。」

「…はい。」

「俺が勝手に…ゲームに関わっただけ、だから。」

「…はい、でも秋山さん?」

「何?」

「私、秋山さんに会えて、本当に良かったと思ってます…出会いは、最悪だったかもしれないけど。」



そんな、可愛らしい事を言わないで欲しい。
俺は君の思っているような優しい人間じゃないのに。
…きっと、俺と彼女は別れた方がいいんだ。
そんなの、解っていた。




だけど、もう…離れられない。







…暫くすると、彼女は眠ってしまったようだ。スースーと寝息を立てて、俺のベッドの上に丸まっていた。



「傷つきませんように、か。」



ふと、彼女の願い事を思い出す。彼女を起こさないようにそ、と窓を開けると、ひんやりとした夜風が部屋に入って来た。…もう、流れ星は見れなくなっていた。



「別に信じてるわけじゃ、ないんだけどな。」



そう、俺は別に願いが叶うなんて信じていない。
だけど。
彼女がそう言うのなら、俺は、















あいつが笑っていられれば、もうそれでいい。
                              次に流れ星を見たら、心の中で呟いてみようか、なんて。