「あ、秋山さんっ!!」

「…何してんの、君。」

「ずーっと家にいるのもあれなんで、来ちゃいましたっ。」



なんでそんなときに来るのが、俺の家なのか。



「…はぁ、とりあえずあがれよ。」

「はいっ、お邪魔しまーすっ!」



そして、俺も何でこいつを家にあげてしまうんだろう。こんなの、放っておけば良いのに…何故か放っておけないで居る。
とりあえずあいつを家に入れたは良いものの、…会話が無かった。あいつが何の目的でここに来たのかもわからない。まあ、それを聞けば話題ができるのだが、何故か口が思うように開かなかった。痛いほどの沈黙の後、あいつが思い出したように口を開いた。



「あ、そういえば、一回戦のお礼、まだしてないですよね?」

「え?あぁ、そうだな。それがどうした?」

「あ、今、しようと思って!えへへ。」

「ああ、道理で。」


スーパーの大きな袋を抱えて、あいつは「はい、今買ってきたんです。」とにこりと笑った。それを見て、つい頬が緩んでしまう。あいつに気付かれないように、そっけなく「あ、そ。」と返事をして、顔を背けた。見ていないからわからないが、今もまだあいつは笑っている気がする。…何となく、だけど。



「キッチン、お借りして良いですか?」

「…別に、勝手にすれば?」

「はい、ありがとうございます。」



やっぱり、あいつの笑った顔は、すごく可愛いと思う。もちろん、泣いた顔も、怒った顔も、可愛いけれど…笑顔は、特別輝いて見えた。あいつの全部を独り占めしたくなるなんて…俺も相当末期だな。(こんな事考えてる時点で、もう末期か。)



「もう少しでできますから、後もうちょっと待っててくださいねー。」

「別に良いよ、急がなくても。」



考え事をしてる間に、随分と時間が経ったらしい。キッチンからは美味しそうな匂いが漂ってきた。…あいつは、料理上手いのか…?



「はい、出来ましたよ。」

「…オムライス、か?」

「はいっ、私得意なんですよ。」



にこにこしながら言う、あいつを見て、思わず抱きしめたい衝動に駆られた。



「あっ、ああ、秋山さん…っ!?」

「…っ、悪い…。」



…衝動のまま、あいつを抱きしめようと腕を伸ばしていた。本当に、何をしてるんだ、俺は。(やっぱり調子狂うな、こいつといると。)(…でも、それも悪くないかもしれない。)
自分でも吃驚したまま、とりあえず謝ると、あいつは「いえ、大丈夫ですよ、ちょっと吃驚しただけですから。」なんて笑顔で言った。本当にあいつは、無防備というか、危機感がないというか…。まあ、俺が男として見られてないだけかもしれない。どっちにしろ、俺にとっては嫌な事だ。







好きになれ、なんて思ってない。だけど、
                              せめて、俺が男だって意識してほしい。