「…どうした?今日はやけにご機嫌だな。」

「はいっ、今日は、先生とお食事に行くんですよーっ」

「……先生?」



先生、という単語を聞いた途端、秋山の眉がぴくりと動いた。そんなことにも気付かない、といった様子で、神崎は嬉しそうに話し出した。



「一回戦のお礼がしたいから、って。」

「へぇ…、」

「私、やっぱり先生が大好きなんで…元気になったみたいで良かったです!」



「先生が大好き」、それを聞いた秋山は面白くないようで、興味なさそうにそっぽを向いた。神崎は、やっと秋山の様子がいつもと違う事に気付き、心配そうに「秋山さん…?」と声をかけた。が、秋山はそんな神崎の声にも耳をかさないようだ。ますます不安になった神崎は、秋山の顔を覗き込んだ。



「…近いよ、君。」

「えへへ…、」

「何笑ってんの。」

「さっきから秋山さん、何も返事してくれなかったから…今、安心しました。」

「あ、そ。」

「…どうして機嫌悪いんですか?」

「は?」

「や、あの…、なんか、いつもと違うなー、って思ったんですけど…。」



「君が他の男の話を楽しそうにするからだ」、なんて言えるほど、秋山は素直じゃない。でも何か言わなければ、と、彼にしては考え込んだ。



「…君、今日は先生の所行くな。」

「え、どうしてですか…?」

「一回戦のお礼、まだだろ?」

「あ、そ、それもそうですね…!そうだ、まだでしたね。」



そうかそうか、と納得した様子で秋山から離れて、「何作ろう…」と独り言を言い出す神崎に、秋山はホッと胸をなでおろした。



「あ、まだ私、材料買ってないです…!!今買ってきますね!」

「待て。俺も行く。」

「え、良いんですか?」

「あぁ。ちょっと待ってろ。」

「はい!」



ぱたん、と自分の部屋に入った秋山を、神崎はじ、と見つめていた。





       *  *  *




「秋山さんっ、さ、早く行きましょう!」

「…何張り切ってんだよ…買い物行くだけだろ。」

「はい…でも、秋山さんと一緒に行けるなんて思わなかったから…すごく嬉しいんですっ。」



えへへ、と笑う直を見ながら、秋山はただただ自分の頬を赤くしないように我慢するのが精一杯だった。全く、どうしてこの人はこんなにも可愛らしい事を言うんだろう、そう思いながら。



「やっぱり買い物は、一人で行くより誰かと一緒に行ったほうが良いですよね。」

「そうか?」

「秋山さんなら、尚更です。」

「……どうして?」

「秋山さんと一緒にいるの、なんだか楽しいんです!!」

「(だーかーら、なんでこんな事言うんだよ、ったく…。)」



直は、本当に、狙ってるのかと思えるほど可愛らしい事を言う。しかも無意識なのが厄介だ。



「あ、先生からメールです。」

「…なんて?」

「今日、本当に来れないの?、って。やっぱり私…約束ですから、行くべきでしょうか。」

「……ちょっと貸してみ。」

「え、携帯ですか?」



どうして?という顔をした直から、秋山は半ば無理矢理携帯を奪った。カチカチ、とボタンを押す音が聞こえる。直は不安そうに秋山を見つめていた。



「はい。」

「何したんですか、秋山さん?」

「別に。ただ、先約があった、とメールしただけだ。」

「メールしただけ、って。…秋山さんが今日決めたことなのに。」



むー、っと膨れる直に、秋山は思わず苦笑いをした。直は、「酷いですよ秋山さん」とぶつぶつ言っていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、元気に「じゃあ、行きましょうか」と秋山に言った。



「何急に機嫌良くなってんの。」

「…私、しようと思えば今、秋山さんから携帯を取り返すことも出来たんですよ?」



秋山は、何となく直の言っていることの意味が理解できた。自信は無かったが、恥ずかしそうに言う直の次の言葉で、秋山は自分の考えに確信を持つことができた。



「…でも、私はそれをしなかったんですよ、秋山さん。」

「要するに君は、先生の約束を破ってまで俺にお礼をするのも、悪くない、って思ってるのか?」

「……当たり、です。」



えへへ、と笑いながら言う直に、秋山はそっけなく「あ、そう。」と返事した。



「あっ、買い物!!時間なくなっちゃいますよ!」

「…だな。」

「だな、じゃないですよ、行きましょう秋山さんっ!」



秋山さんの腕を引っ張り、スーパーの中に入っていく直の顔は、すれ違う人が思わず振り向くくらい笑顔だった。







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リクエストは【思い切りやきもち妬いた秋山さん】でした。
ご…ごめんなさっ、まさに不完全燃焼です;;
こんなんでよければ、リクエストまだまだ受け付けますよー!(嫌だ)