それは、良く晴れた日曜日の事だった。俺がいつものように部屋でくつろいでいると、急にあいつがやってきた。何か用か、と端的に訊くと、あいつは「なんとなく秋山さんと居たいんです。」なんて言った。…その一言一言が俺を動揺させるということを、彼女は知らないんだろう。



「えへへ」



彼女の気の抜けるような笑い声に、俺はぴくりと反応した。



「…何、」

「もうすぐ私の誕生日なんですよ。」

「そうか。良かったな。」

「はいっ、今日、当日は渡せないかもしれないから、って、お父さんからプレゼント貰ったんですよ!」



もうすぐ誕生日と聞いて、彼女に何かプレゼントを贈ろうと決心したが、「プレゼントやるよ」、なんて口に出すのはあまりにも恥ずかしかった。だから、彼女に悟られないように、彼女に「あぁ興味が無いんだな」と思わせるように、そっけなくふぅん、とだけ返事をしたんだ。



「誕生日、いつだ?」



ストレートすぎたか、とドキドキしたが、彼女は何も気付いた様子も無く、ただ「あ…明日です。」と言った。…明日、か。さて何を贈ろうかと考えながら、ふと彼女を見ると、いかにも小学生の女の子が好みそうな薄茶色のくまのぬいぐるみを嬉しそうに見つめていた。



「今時くまのぬいぐるみもらって喜ぶ奴いるか?」

「可愛いじゃないですか、ちゃんと見て下さいよ。」



むきになった彼女が可笑しくて、つい笑いそうになった。でもそれはらしくないな、と思って、とりあえずいつものように返事をする。彼女は困って、言葉に詰まったらしい。そんなに馬鹿にしなくたって…といったような表情で、しょんぼりと肩を落とした。



「…で、もうこんな時間なんだけど?」

「へ?」

「家、帰らなくていいの?何か用事あるっていってたけど。」

「あ、そうだ、私これからお父さんのっ!!」



思い出したように彼女は立ち上がった。今日は彼女のお父さんの検査の日、らしい。(…なんでそんな大事な日に俺の家に来るんだか。全く。)



「おい、」

「はい?」

「君、明日何か用事入ってるのか?」

「え…っと、特に何も…」



これはチャンスとばかりに彼女に明日は家に居るようにと伝える。彼女は不思議そうな顔をしたが、いつもの笑顔で「じゃあ、待ってますね!」と元気良く言い、家を出て行った。



「…ふぅ、」



…後はプレゼントに何を渡すかだな。あいつは何かぬいぐるみとか喜びそうだけど…既にくまのぬいぐるみもらってるしな。…というか、幼い子供が喜ぶ物なら割と何でも良いんじゃないか?(精神年齢低そうだし。)(…流石にそれは言いすぎ、か。)



「…あ、」



ふと、ある言い伝えを思い出した。19歳の誕生日に、銀の指輪を貰うと幸せになれる、というものだ。俺は別に、言い伝えとかおまじないとかは信じない。…でも、とりあえず彼女は信じるだろう。そしていつか言い伝えを知って、俺の気持ちに気付けば良い。



「そうするか…指輪でも喜びそうだしな。」



俺はそう思って、行き慣れていない宝石店へと歩き出した。






     *  *  *


次の日。
お昼ごろ彼女の家に行くと、彼女は確認もせずにドアを開けた。…まぁ、俺だと確信して安心しきってドアを開けたんだろうけど、とりあえず警戒して確認くらいはして欲しかった。(俺が不審者だったらどうするんだよ、ったく…。)



「確認ぐらいしろよ。」

「あ…でも此処に来るのなんて、秋山さんしか…」

「そういう甘い考えがいけないの、君は。」

「…すみません、」



少し強く言い過ぎたかもしれない、と今更気付いてももう遅い。しょんぼりと謝る彼女を見ると、なんだか俺がものすごく悪い事をしたような気分になってしまう。…とりあえず別に良いけど、なんてありきたりな言葉で流した。それでもなんだか気まずくて、はい、と少し乱暴にプレゼントを渡した。



「…なんですか、これ?」

「それやるよ。誕生日だろ、今日。」

「え、あの…、」

「じゃあな。」

「えっ、あ…っ、秋山さんっ!?」



彼女の呼び止める声を無視して、俺はさっさと家を出た。…何となく、本当になんとなくだけど、俺の顔はものすごく赤くなっている気がしたからだ。
とりあえず彼女の家から離れて、一息つく。…びっくり箱でプレゼント渡すなんて、相当ひねくれてるな、俺。



「…後は、あいつは気付くか、だな。」



彼女が本当のプレゼントを見つけて、わぁ、と喜んだ顔を想像する。それははっきりと頭の中でイメージできた。もし見つけたなら、すぐに俺にお礼を言いに来るだろう。いつものように、明るい笑顔で「ありがとうございます、秋山さん」、と。それだけで俺は、指輪を買ったときの恥ずかしさなんてふっとんでしまうんだ。…俺は、救いようの無いくらい彼女に依存しているのかもしれない。



「気付かなかったら許さないからな、覚えとけよ。」



俺は誰にも聞こえないような小さな声で、そっと呟いた。










遠まわしなプレゼント
                     捻くれ者の俺からの、精一杯の君への気持ち。











Thanks!!:ぽんぽん山さま
ポンポン山さまが居たからこそ出来た妄想です。笑
本当にありがとうございました!!