どうした、とか。
何かあったのか、とか。
そういう事は一切訊かないで、彼はただ私の手を握ってくれた。
「…ここ。」
「え、あ…っ、えっと、お邪魔します。」
あれから私は、何を喋るわけでもなく瑠樺さんに付いていった。
瑠樺さんは気を使ってか、何も訊かずに、手を引っ張ってくれた。
途中、少し心細くなって手を握り返すと、瑠樺さんはもっと強い力で握り返してくれる。
それだけで私は、すごく嬉しかった。
「適当にその辺座って。」
「え、あ…ハイ。ありがとうございます。」
瑠樺さんの家は想像していたより綺麗だった。
一般的に言うと綺麗より汚いに入るかもしれないが、想像していたより十分綺麗。
…もしかしたら、散らかっている時の私の家の方が汚いかもしれない。
しばらく部屋を見回していると、瑠樺さんが2つコップを持ってきた。
コップの中には、黒い液体(多分きっとコーラ)が並々と注がれていた。
「…コーラしかないけど。」
「あ、やっぱり。」
「は?」
「あ、いえ、何でもないです。」
「……さっき、」
「え?」
「さっき、何かあったのか?」
「……、」
「別に言いたくねぇなら良いけど。」
「いえ、言いたくない訳じゃ、ないんですけど…」
「…あ?」
「……話し出すと、思い出しちゃう、から…また、泣いちゃいそうで…。」
「―――……、」
「そうしたら、迷惑かけちゃうなぁって、思って……ッ!?」
そこで、急に私の視界は真っ暗になった。
「るか、さん…?」
瑠樺さんに抱きしめられている、と気付くのに数秒かかる。
それくらい、瑠樺さんはいつもの何気ない一つの動作をするように、
自然に私を抱きしめていた。
普段の私なら、ここで抵抗していたかもしれない。
でも、この温もりをまだ感じていたい、離れたくない、なんて思っている自分が居た。
そんな事実に、少し戸惑う。
「…迷惑とか、言うな。」
「え…?」
「俺は、迷惑だなんて感じてねぇから。」
涙が出た。
それはさっきまでの悲しい涙なんかじゃなかった。
その涙を知られないように、泣いている事に気付かれないように、
声が震えそうになるのを堪えながらお礼を言った。
「…ッ、ありが、と…っ」
「…お前は遠慮しすぎなんだよ。」
「っ、」
「何があったか知んねぇけど…もう、大丈夫だから安心しろ。」
「…う…っ、」
泣いていた所為で良くは見えなかったが、瑠樺さんは優しく私を見つめていた。
瑠樺さんの手は私をあやすようにぽんぽんと規則正しく背中を叩いている。
あぁもうこの人はどうしてこんなに優しいんだろう。
私は瑠樺さんの優しさに甘えて、思いっきり泣いた。
「……無理すんなよな、馬鹿。」
もうすっかり眠ってしまったに向かって呟くように言った。
は、泣きながら謝っていた。
それが誰に向けられた、何に対しての謝罪かはわからなかった。
「…、」
そ、と頭を撫でる。
びくん、と反応したが、起きる気配は無かった。
「俺は…お前の力には、なれねぇのかな…」
そんな呟きは、夜の静けさに溶け込んでしまった。
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次回はついにヒロインちゃんの過去!…の予定!爆
急展開も一応用意してるけど…何かその設定は気にいらないしなぁ。
うぅーん…この連載どうしよう。(マテ)